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越乃寒梅のこと(1998年冬号)                                             

   
  
越乃寒梅。以前当コーナーの前身「利き酒日誌」でも取上げたことがありましたが、どうも世間の風評がよろしくないようなので、あらためてお書きしたいと思います。
「越乃寒梅なんてたいした酒じゃないよ「越乃寒梅ってなんであんなに高いの?蔵も儲かっていいなぁ」
店に来られた人からよく聞く言葉です。

まず、結論から言うとやっぱり越乃寒梅はいい酒だと思います。
利き酒してみるとよくわかります。
でも、美味しいかどうかは別の問題で、それは飲んでくれた人がそれぞれ決める事です。
その人が美味しくないと言ったら回りがどう言おうと、美味しくないでいいのです。

ただ、前にもまして寒梅のイメージが悪くなってきているようです。
原因は何なのかなと考えたのですが、やはり売り方の問題ではないかという気がします
「○○店で寒梅1万円で売っていたよ」
「△△店は他の酒と抱き合わせで売ってたよ」
どうもこれが原因なのかもしれません。
そりゃそうですよね、本来二千円程度の酒が4倍にも5倍にも高い価格で売られていたら美味しいはずのお酒も美味しく感じるはずがありません。(面白いことにワインの世界は逆のこともあるのですが)

実は、いくら高く売られようと製造元である酒蔵が儲かることはありません。儲かるのは間に入っている全く関係の無い中間業者、及び一部の酒屋です。
酒屋が酒屋に高く売る、または中間業者(ブローカー)に売る、他の酒も買わせられる。酒は回されて回されて、どんどん価格が上乗せになってくる。ものをお金に換えることにしか興味のない人たちにたらい回しにされ、結局末端の消費者に届くころには飛び抜けた価格になっています。

でも、酒を造っている酒蔵さんの本音を言うと
「晩酌で飲んで頂きたい」
そうです。
あっちこっち、たらい回しされてプレミアがついて、知らない所でどんな売られ方されているかわからないよりも、本当に好きな人がその場その場で楽しんでもらえたら…。
酒もそっちの方がきっと幸せだと思います。

とにかく酒のプレミア販売や抱き合わせ販売は業界にとって百害あって一利無しです。
それが越乃寒梅のイメージを必要以上に悪化させてるものと思います。
当店は寒梅さんとは直接関係のない店ですが、せめて皆様には知って頂きたく書かせて頂きました。

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 ※ 現在(2010.9月)は越乃寒梅は当時のように定価の4、5倍もすることは無くなりましたが、問題が解決された訳でなく、根本は全く変わってません。最近、色々な業者さんから「幻の焼酎リスト」なるものが当店にも送られてきます。森○蔵、魔○、伊○美他人気の焼酎買いませんかと。もちろん定価2,3千円のものが1万円〜2万円もするお決まりのプレミア価格。同じ事をまた繰り返しています。
お酒のプレミア販売は百害あって一利無しです。
消費者の方も定価より高く酒を買わなくてはいけないし、酒蔵も自分達にプレミア分の利益が入ってくるわけでもなく、関係の無い第三者が儲けているだけの話。
もっと言えば酒に愛着の無い人達が、他人が苦労して築きあげた酒の価値にたかって、その価値をお金に換えて儲けているだけの行為です。
自分で井戸を掘らずに、人が掘った井戸に群がってきて、自分の利だけ貪り、その井戸が枯れそうになるとまた次の井戸へ移動する。頭にくる行為です。
ただ、今の自由経済では合法どころか、正しい行為とみなされ法的に止めることができません。ですからせめて良識ある消費者の皆様はどんなプレミア商品にも手を出さずに、ご苦労ですが正規のルートで安心して酒を買って頂きたいです。